このままなら合格?編入試験 第1局(▲黒田尭之四段vs△折田翔吾)
色々ありました。まず、対局前に駒を並べる時に、折田さんが飛車をおかずに歩を並べ始めたんですよね。解説では瀬川さんが「これは?…これはアゲアゲ流なんでしょうか?」と驚いていましたが、終局後の折田さんのコメントで二度びっくり、なんと「忘れていた」とのこと。忘れるぐらい緊張していたみたいですね。
ただ始まってしまえばその緊張も吹っ飛ぶ…と思いきや黒田さんの初手が端歩!これは挑発とか外しにいっているというよりは事前準備にインパクトを加える、ある種のサービス精神的なものもあったみたいです。
ちなみにソフト的にはこの手はどのぐらいの評価値なんでしょうね。後手で端歩だと流石に辛そうですが先手で端歩なので初期値が少し下がる程度、ただマイナスにはならない…という感じでしょうか。
黒田さんは四間飛車。折田さんの作戦を居飛車穴熊を第一候補に予想し、第二候補にトーチカ(ミレニアム)を考えていたようですが、折田さんはトーチカ風の構えからすぐに端を反撃しました。
この辺は先手が端歩を突き越ししつつ37に桂を跳ねて端が薄かったのが誘発原因かもしれません。お互いに組み合って銀冠まで行けば問題なかったところで、折田さんが機敏に動いた感じで後手番ながら主導権を握りました。40手目に端から後手が反撃した局面は多少後手の評価値が高いかもしれません。
47手目、私は以下のようにつぶやきました。
#ShogiLive #棋士編入試験五番勝負第1局 #黒田折田 #46手 普通なら同香。ひねるなら56香とか?
— 将棋観戦 (@shogiwatch) November 25, 2019
ただ、結果的にはこの香車は終局まで全然効いてなかったですね。とはいえ素直に香車交換してもやはり端攻めが厳しそうで、評価値はさておきその後の選択肢としては後手が分かりやすい感じだったのかもしれません。この評価値はさておき、というのはソフト強い時代ではとても重要な観点だと思います。
後手が飛車先を破ったあたりでは龍を作ることが約束されているので既に後手が有利かもしれません。色々あるなかで、折田さんが若々しい手(角交換を強いる手)を指しました。この辺は色々ありそうでした。おとなしく龍を作っておく、というのも一つ。あとはもちろん本譜の角交換もありました(角が使えてなかったので彼我で働きの差異がある駒を等価交換する)。
クライマックスは84手目でした。ここは最善手がよくわからないところでしたが次の一手のような目の覚める一撃を折田さんが繰り出しました。
最近、私は駒落ちを中心にソフトで研究することが多いのですが、駒落ちですらソフトはこういう派手な手を推奨しません。推奨する時は本当に決まっている局面のみ、です。それ以外は相手が最善の粘りをした場合に水面下にある評価値ボラティリティを高めてしまうので人間としてもその点は見習うべきと思います。
プロ棋士の指し手についてよく言われる表現の「相手の手を殺す」という感じです。失点せずに相手のミスを見逃さずに、相手の指し手の選択肢を狭めていく…という感じ。
ただ本局の折田さんは全く震えずに踏み込みました。かなり先にある本譜にも現れた角打ちに角を合わせる手がピッタリだと思った、と終局後のインタビューで答えていました。
本譜の龍を作った手に対してたんに飛車を逃げた手がもしかすると先手の敗着だったかもしれません。ただ変わる手も難しく12角などでは後手玉の早逃げを催促するので人間同士らしい勝負手気味の手だったのかも?
持ち時間を残している折田さんはそこから淀みなく危なげなく寄せきりました。アベマの解説陣がどうするんだろう?と言っていた局面を恐らくかなり前から読み切っていた(から角をタダ捨て出来た)ことを思うと、充実しているな、と感じました。
勝ち将棋鬼の如しとはいうものの、この指し回しレベルのパフォーマンスを今後も維持出来るのであれば相当に合格可能性が高く、そして合格後の活躍も期待できるのではないでしょうか。
ぱっと見の棋士レーティングは軽く1,600点を超えてそうで、順位戦参戦すればすぐに昇級候補になるように思います。勝ち星の全てが銀河戦という持ち時間の短い棋戦に集まっていたため、試験将棋の時間でどのように実力を発揮するのか未知数なところはありましたがこの強い勝ち方で払拭できました。
以下、次局についての私のツイートで締めます。
次の出口さんともほぼ互角。居飛車党同士の対戦での先手は大きい。ただ出口さんは研究家で想定局面まで飛ばすタイプっぽいので狙い球を絞れるか?が大きそう…だけど折田さんの終盤は相当強そうなので終盤入り口まで互角なら、連勝期待出来る! https://t.co/Xl2Ikq2trA
— 将棋観戦 (@shogiwatch) November 25, 2019
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