藤井聡太、遂に覚醒?(第13回朝日杯本戦トーナメント)
いやー半端なかったですね、日曜日の藤井聡太さん。もともとは不得意なタイプ?だったように見える二人、菅井竜也の先手番中飛車と、斎藤慎太郎の用意してきた研究に対して、素晴らしい指し回しでした。
解説の三枚堂達也さんが「詰将棋・終盤力を受けに使っているかんじ」と解説していたのが印象的。ソフトの感性というか感覚というか、指し回しを見ているとお互いに最善を尽くしている場合は非常に地味な展開になると私は思っていて、そういう雰囲気を最近の藤井聡太さんの指し回しに感じます。
初戦の菅井さん、かなり作戦凝らしてきましたが、あの作戦は徹底的に藤井聡太に得意の駒(桂馬・角)を使わせないためのものだったのかな?と思いました。中盤までに桂馬が運用出来ず、角も22に隠居させていましたし。
実際それが功を奏していたのかはわかりませんがエラーのある人間にとって穴熊は精神的メリットがあります。11角を打たれた局面は絶体絶命に見えたのですが、感想戦の様子を観る限り、藤井聡太さん的にはそこまでひどいとは思ってなかったようです。実際の評価値はどうだったんでしょうかね?
角を詰まされて負けにしたという感想を菅井さんは残していましたがもしかすると、藤井聡太さん的には馬を切る激しい順でも受かっていると考えていた可能性が結構あると思いました。
そして面白かったのが感想戦。2時から対局なので割とあっさり終わるのかな?と思っていたら、菅井さんかなりアツかったのか割と長めにやってましたねwその後も三浦さんと調べていたようです。
2時からの2局目、斎藤慎太郎さんと藤井聡太さんは人間的なタイプも棋風的なところも、詰将棋が得意なところも、非常に似ている気がします。若干受け身の攻め将棋、角換わりを得意にしている、人間的に落ち着いている、真摯な雰囲気などなど。
久しぶりにプロの角換わりの最新形を真面目に鑑賞しましたが、もはや中盤までの指し方は意味不明過ぎますね。スポーツで例えると相撲のまわしの取り合い…みたいなのが延々と続いていました。
AIの発展により、人間的な精神安定剤のような穴熊や囲いすぎるとバランスが偏るのでその偏りを突かれてしまうと駄目、というのが大前提としてあり、その文脈で発展した最先端がこれ、ということです。昔から穴熊は邪道、棋理では違う指し方が正しいはず、というのはよく言われていたことですが遂にそれが実現した世界がこれ。
これはこれですごいなんというか…という感じはしますが、ちょっとの評価値の良さをそのまま維持して勝ち切る技術が高まった結果、穴熊や堅い囲いの実戦的優位性は薄れてしまったので仕方ないのでしょう。
藤井聡太vs斎藤慎太郎戦、71手に先手が35歩を突いて開戦したわけですがそこまでの評価値としてはほぼ互角~初期値程度の差異だったように思います。ただ後手の銀が後退したタイミングでの攻撃開始となり、先手が主導権を握りました。
ただ開戦してからの47銀はちょっと不思議な手順で、もっと良い攻撃続行の手段があったようにも見えます。具体的には端から行く…という感じですね。藤井聡太さんは初期値より悪くなって無ければ、互角以上であれば問題ない、という考え方なのか、確実に差を広げられる手段が見えない場合は待つ、というのが基本方針なのかもしれません。
その狙いは見事に的中し、77同金と取った形が非常にしっかりしており、後手の反撃がやや空振ってしまいました。直後の75歩がやや甘く、先手の銀が再び前進します。この辺も一発で決めるというよりは将来の相手の選択肢をどんどん狭める、真綿で締めるような手順です。局面を激しくせず、評価値のボラティリティを上げずに、良さを徐々に高めていく、という感じ。
大駒を盤上に手放すとき、具体的な成果がない場合は評価値は下がる…とおぼえておくとどのような手合いであれ、わかりやすい考え方になりますが、後手の55角がまさにそういう手でした。この角がもたらす成果がなく、単に目標となってしまい、ここでは先手が優位に立ちました。97手目のことです。
33歩が激痛、これで後手の角が助からず、先手の大きな駒得が確定しました。良くなってからの指し回しも油断せず抜かり無く。ただし投了図の決め手はかっこよいですね。こういう派手な決め方が藤井聡太七段の魅力、と師匠の杉本先生も常々仰っています(普通に桂馬成るぐらいでも先手勝勢だったと思いますw)
詰将棋の神聖さを支持する斎藤慎太郎七段はこの手で投了、一局目とあわせて格好良い投了図が出来上がりました。
この二局を見る限り、普通に以前より強くなっていますし、まだ成長することを思うとこれから数年で確実に天下を取ると思います。
あとは現時点で最強の渡辺明三冠との棋力差ですね。そこだけが測りかねているところです。噂?本人がある程度匂わせた感じでは永瀬拓矢二冠と藤井聡太七段のVSの勝率は藤井聡太さんのほうが高そうです。ただ永瀬二冠と渡辺明三冠ではまだ今の所渡辺明三冠のほうが強いのではないか?というのを対戦成績的にも最近の将棋を見る感じでも思います(勿論、永瀬拓矢二冠も死ぬほど強いわけですが)。
あとは渡辺明三冠と藤井聡太七段の棋力差がどのぐらいあるのか。いまの渡辺明三冠の強さは、過去に遡っても史上最強レベルに強いと思います。そこと藤井聡太さんがどのような戦いを見せるのか。
朝日杯の決勝の場でもしその二人が対峙することになった場合、決勝戦で示されるのはここから数年の未来です。渡辺明三冠が勝てばちょうど谷川羽生の初期の争いのような状況が訪れるでしょう。藤井聡太七段がもし昨日示したような戦いぶりを再び2局連続で見せるとすれば、それは藤井聡太時代の幕開け…ということだと思います。
決勝戦のSS席チケットを幸運にもゲット出来たので今から楽しみでなりません。
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