藤井聡太七段、最年少挑戦を決める(第91期棋聖戦)
以下、私の個人的な感想です(異論反論あるかと思いますがご容赦くださいw)。
まずコロナ騒動による東西対局自粛と学校休校。この二つにより、藤井聡太七段の棋力が高まったのは間違いないでしょう。他の棋士でも熱心に努力されていた人は多いと思いますが年齢的に成長曲線の違いがあることを考えるとこの時期に一番伸びたのはプロ棋士では藤井聡太七段で、あとはそれに続くような成長をした奨励会員がどのぐらいいたか。
恐ろしいことに藤井聡太七段はコロナ騒動前の時点でレーティングサイト上での点数が一位になっていました。そこから2か月弱、本人的には行かないという選択肢も魅力的だったはずの学校も2か月なかったため研鑽を積むことが出来たという幸運。
師匠の杉本先生は試合勘などを心配されていたようですが準決勝の佐藤天彦九段戦では文字通り杞憂であることを証明し、昨日の永瀬二冠との対局でも二転三転のねじりあいになりましたが、勝ち切りました。
どちらかというと、この三人(藤井聡太七段、佐藤天彦九段、永瀬拓矢二冠)は攻め将棋ではあるものの、受けに持ち味のある棋士だと思います。羽生善治九段もややこちら側といえるのではないでしょうか。柔と剛という意味では前者というイメージ。
同じタイプに対しては比較的、藤井聡太七段が勝つ展開が多いような気がします(羽生さんに3-0、天彦さんに2-0、永瀬さんに1-0)。
タイトル戦で対峙するのは、渡辺明三冠。稀代の攻め将棋の天才で、筋の良い本筋、早見えかつ作戦家の棋士で今が本人の(10-15年続く・続いている)キャリアハイにある状態です。
渡辺明三冠は柔か剛でいえば後者。大一番では相手の棋風や性格を考慮して練った作戦を用意。先行逃げ切りタイプの攻めの棋風といって間違いないと思います。果たしてこういうタイプとの闘いでどういう成績を残すか。
藤井聡太七段の昨年度の敗戦では後手番で先手の居飛車党がしっかり準備した場合に押し切られてしまう展開が幾つかありました(というかそれが後手番というものであり、普通なのですが…)。
タイトル戦となると先手後手が予め決まっているので、渡辺明三冠の作戦家としての強みが出そうです。ただ、名人戦との棋聖戦の同時進行による過密日程での連戦…というのが懸念点。渡辺明三冠としても(おそらくは)念願の名人戦登場。相手の豊島将之竜王名人も鬼強いし二日制なので作戦の出し惜しみはできないでしょう。
となると棋聖戦は比重的には(相手の藤井聡太七段がそこまで作戦的に凝らないタイプであることもあり)、作戦は相手なりに…ということになりそうです。先手番では角換わりか矢倉、相掛かり。後手番では相手の角換わりに対応しつつ、星勘定的に余裕があれば多少変化するかも?
あとは戦型的には名人戦・棋聖戦で出た課題局面がもう一方でも出現するかもしれません。
渡辺明三冠といえば、羽生世代のピーク期に唯一対峙できた若手棋士でした。そして今は若手棋士に対して相当星を稼いでいる、最も強い中堅棋士であるといえます。これまでのタイトル戦ではすべての年下を返り討ちにしており、表向きの発言としては丁寧なものしかありませんが、盤上の指し回しを見る限りでは「まだまだ君たちには負けないよ?」という余裕すら感じさせてきました。
今回もそういう王者の風格でしっかり勝ち切るのか。或いは2か月前に既にレーティング一位になっていてそこから更に成長しているであろう、若き挑戦者の藤井聡太七段が初挑戦初戴冠となるのか。
個人的な予想としては渡辺明三冠には申し訳ないのですが、藤井聡太七段の奪取を予想しておきます。理由としてはやはり名人奪取のほうが重要なので…というのと、藤井聡太七段が強くなりすぎている可能性があるからです。
私の予想では数年後、藤井聡太七段が名人位を獲得するとして、それが八冠目になっているかはわかりませんが、全部のタイトルを手にする日が名人位獲得とほぼ同時期に訪れると思っています。
近年の将棋をみていると色々ありましたが、やはり作戦的に相当煮詰まっている印象があり、細かい形の変化など専門性を先鋭化することで凌いでいる振り飛車党と、先手番の作戦の脅威に対して具体的解決策というよりは多少悪いくらいの局面をキープして勝負としてどうにかするしかない居飛車党、という構図に見えます。
そういう状況が今後は延々と続くと思われ、そうなるとエラーレートがどの棋士と比べてもおそらく著しく低いであろう藤井聡太七段が特に番勝負になればなるほど、その正確性と終盤力ゆえに勝ちまくる未来しか見えない気がします。。
タイトル戦、前夜祭や祝賀会がないのは残念ですがそれゆえに対局者は盤面に集中しやすくなるでしょう。レベルの高い芸術作品をこの夏は沢山見ることが出来そうです。
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