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藤井聡太七段、強すぎ問題(第91期 棋聖戦第二局▲渡辺明三冠vs)

例によって個人的な感想です。異論反論はご自身のSNS等で是非よろしくお願いしますw

藤井聡太七段、強すぎて震える…というか畏怖、本当にその言葉以外見つからない感じです。。



上記のアンケートちゃんと表示されてるのかな?プレビュー画面ではちゃんとみれてないんですが、400票以上の投票で95%の人が今期末までにタイトルを獲得している、と予想していますね。私も同意見です。

というか、番勝負になったときに、この藤井聡太七段相手に勝ち越せる人がいるんだろうか?と素朴に思ってしまうぐらいに強い。後手番ですべて84歩と2手目に指しているのにこの勝ちっぷり。ふつうは先手番の得を生かして後手はかなり苦戦するものなのですが…。


対局後の渡辺明三冠の感想はこちらから。


いつものようにかなり正直に感想をかかれている印象です。

本局は渡辺明三冠が先手番ということでそれなりに気合が入っていたのではないでしょうか。作戦は急戦矢倉。途中まで同一局面があったということで、お互い研究範囲だったようです。

しかし42手目の金を四段目に出る手が藤井聡太七段の研究手。最近の対局では相手より中盤まで時間を使っていることが多い藤井聡太七段ですが、本局はここまで相手より時間を残して戦っていました。

この手はプロ棋士の第一感の手ではないはずです。一目で見える類の手ではないので、おそらくソフトを活用した研究手なのではないでしょうか。

少し話は逸れますが、羽生さんには藤井システムのような羽生流と呼ばれる独自の作戦があまりないと言われています。常に自然に指す、新しく出てきた作戦を本人以上に使いこなす、それで恐ろしいまでに高勝率を維持してきたのがいままでの羽生さんです。

藤井聡太七段の最近の指し回しをみていて思うのは、若手にありがちな勢いのある、多少無理気味な攻めというのが一切ないということです。流行の課題局面についてはそれぞれに自分自身の結論を用意し、少し良いくらいでもそれを一気に拡大するのではなく、じりじりと良くしていく。

ソフトの活用は間違いなくあると思いますが、各種の作戦、初見では食らうこともあるかもしれませんが、前例のある形では少なくとも互角以上の用意があるように見えます。圧倒的な詰将棋の力、特に長手数の詰みを読み切る力があるからこそ、焦って殴り合いになるリスクを冒す必要がないということでしょうか。

よくプロ棋士が「ソフトの示す最善手というのは、ソフトだから勝ち切れる危ない順を含むものなので人間にとって、自分にとって勝ちやすい手ではない場合がある」ということを言っています。

これはその通りで、精密機械であれば、幅30センチの木の板の上を絶対に間違うことなく進むことが出来るかもしれませんが、人間の場合、それが地面だと可能なのに地上100mの高さだと無理、みたいな心理面の影響もありますし、車なら時速60㎞で100㎞でも走ることが出来るわけですが、人間の能力的にそれは無理…というような、スペック的な難しさもあります。

藤井聡太七段の本局の指し回しでいうと、42手目の四段目の金上がりは玉が薄くなりすぎますし、次の44手目飛車回りは玉飛接近形で一目危ない。流れ弾に当たりやすくなっているものの、この局面をソフトに解析させれば後手に評価値がわずかに振れているようです。

ただこの形を選択するということは、人間がこれまでの歴史で蓄積してきた「一目こういう手」という羅針盤みたいなものがほぼ使えない状態で勝ち切る必要があるということです。

上記の渡辺明三冠のブログでも触れられてますが、46手目に50分、48手目に58分、50手目に29分と時間を使っているのはその辺が影響しているのかもしれません。藤井聡太七段の大局観はもちろん素晴らしいわけですが、方位磁石が使えない磁場が狂った状況での指し手を圧倒的な読みの力で乗り切った感じです。

アベマトーナメントで藤井聡太七段が広瀬さんに二連敗したことからわかる通り、第一感の手だけで指す場合はトッププロ同士であればそれなりに対戦成績は五分に近いものになっておかしくないなかで、藤井聡太七段はどの序盤であっても網羅的に互角程度以上の指し手を用意し、そこから先は持ち時間と相談でその場でひたすら考えて形勢を損ねないように指していく。

ある程度形勢に差がついても相手に余裕を与えず選択肢を狭めていくのがすごいですね。相手の攻め駒、強い駒を無力化しつつ、相手が使いにくい歩・桂馬や角を軸に攻めを継続する…。

表現が正しいかわかりませんが、人間がソフトと対局するとこういう風になるのではないか?という気がします。ソフトに割と軽い攻めを仕掛けると形にとらわれず、完璧に受け止められる…という印象があるのですが、藤井聡太七段の中盤が急ぎすぎないのはその辺を研究の中で知っているからかもしれません。

準備した局面の評価値は自分に多少プラス、中盤で一気に決めに行く手は超ハイレベルの将棋には存在しない、という二点を念頭に置きつつ、中盤は見える候補手全てひたすら先まで読み、一番激しくならず自分の評価値を下げない展開を選んでいる、そういう風に見えます(と書くのは簡単ですが実行することは容易ではないんですが。。

藤井聡太七段の指し手って、中盤の入り口ぐらいまではプロの第一感の手が出るんですが中盤以降、プロの予想が全然当たらない手が頻出する印象です。ひたすら読んでいる、第一感の手、見た目で良い手から掘り下げてない印象があります。

昔、谷川浩司九段の光速の寄せが棋界を席捲していたころは、終盤の体系化と高速化が図られたわけですが、藤井聡太七段が今示しているのは「中盤探索を深化」させる必要性なのかもしれません。

たとえば現局面が+100点であれば、そこから評価値を100点以上下げない局面をひたすらに読みまくる…というような。ふつうの人よりも候補手で2,3手多目に、深さでもやはり2,3手深めに読めている感じがします。。。

以前の藤井聡太七段であれば、時間の使い方として、困った時に長考している印象がありましたが、コロナによる非常事態宣言解除後の指し回しをみていると序盤の分かれがそこそこ以上で、それを維持拡大するために時間を惜しみなく投入し、しかし最終盤のためには10分程度は残す、というタイムマネジメント力の向上が見られます。

実戦将棋で藤井聡太に5分以上考えさせてもわからない詰将棋というのはおそらく出現しないでしょうから、その詰将棋解答能力ゆえのタイムマネジメント。これも普通の人では真似ができません。中盤までは相手よりも大きく時間を使っているのに、その差が徐々に縮まり、対局終了時点では逆転しているか、ほぼ同じ状態、しかも藤井聡太七段の持ち時間はまだ数分余っている…というのがここ最近の定番となっています。

後手84歩で相手の作戦を真っ向から受けるタイプにこれだけ勝たれるとどういう作戦を用意すればいいのか?が本当にわからない感じですよね。。。個人的には、例の飯島流の飛車を引く横歩取りを一度みてみたいです。藤井聡太七段のあれへの対策がどの程度充実しているのか?をみてみたい。

次は渡辺明三冠の後手番です。非常に戦型選択が難しくなりました。ボールカウントがいい状態であれば雁木なども投入出来たと思いますが…。角換わり腰掛け銀の後手番の秘策は名人戦にキープしておきたい気もします。。かといって、横歩取りは対策がばっちりのときに狙い撃ちされるリスクもあります。

ここまでは藤井聡太七段の良い所が目立っていますが、常に下馬評を覆し、子供のころから高い期待をうまくやり過ごしながら実績を残してきた渡辺明三冠のここからの反撃をみてみたい気がします。渡辺明三冠が藤井聡太七段を追い込むだけ追い込んだ時に成長した藤井聡太七段の本当の姿が見れるのではないでしょうか。

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Tag : 渡辺明藤井聡太

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