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渡辺明三冠、王者の風格で勝利(第91期棋聖戦第3局)

いやーすごかったですね。

徳俵って知ってますか?相撲の土俵でちょっとだけ外側に出っ張ってる部分があるんですけど、いいことあるといいな、みたいな意味で得じゃなくて徳俵と呼びます。

強い力士はそもそも押されて押し出されそうにならないのでこの徳俵を使うことはないんですが、ごくまれにここに足指をひっかけたギリギリの状態で勝ち切る、そういう相撲があります。ごくまれにですが。

渡辺明三冠って子供のころからずっと天才といわれてたわけで、本人も頭がいいし気が回りすぎるからその視線や勝手な期待や純粋な好奇心とか、色々面倒くさいなーと思いながらもうまくそれらをかわして、しかし結局はそれを上回る・期待通りの実績を残してきたんですよね。


お昼休み時点で、これは先手が受け止めきれるのでは?と私は思っていたわけですが、全然違いましたね。感想戦前のインタビュー聞いてたまげましたが、渡辺明三冠は「まあ、さすがに昼食休憩ぐらいまでは想定してて」みたいな感じ(具体的には飛車を打つところぐらいまでは考えたことがあった)だったのに対して、藤井聡太七段はその手が想定してなかった模様。

渡辺明三冠は珍しく深夜にすぐ更新したブログで「研究が当たっただけ」と謙遜?してましたが、それは偽らざる気持ちとは思いますが、それにしてもカド番の後手番で相手の大得意の角換わり腰掛け銀を受けるとは思ってましたがこんな恐ろしい展開の作戦を用意しますかね…。おそるべき胆力、さすが3連敗4連勝を実現した男、さすがは三冠王、という感じでした。

すごく古い話になりますが王貞治という大打者の得意のコースがインコース高めで、そこらへんに投げると大体ホームランになっちゃうんだけど、王さんの弱点はそのちょっとだけ上にあってそこに投げないと打ち取れないんだ、みたいな話を思い出しました。どの投手が言ってたのか忘れましたけど。そういう印象を与える作戦選択だったと思います。

ここ最近の藤井聡太七段の勝ち方はちょっと神がかっているというか中盤の長考で全てを読み切ったような雰囲気すらありましたが、本譜の長考は難しさを感じたがゆえのものだったみたいですね。



研究していた想定局面に誘い込み、相手の時間が削られていて渡辺明三冠は2時間残してて藤井聡太七段は20分以下、みたいな時は流石にこれは渡辺明三冠が勝ったかな?と思ったんですがそこからも慎重に慎重に渡辺明三冠が進めていき、結局終局時の持ち時間は13分?とかだったのでこれをみても単なる若者挑戦者とはわけが違うんだろうな、と思いました。

今まで渡辺明三冠は年下にタイトル戦で負けたことはなく、追い込まれたケースも将棋の内容まで含めていえばなかったように思います。しかもこれだけタイトル戦に登場していながらストレート負けの経験がないという。羽生さんですらあるのに。

本局の勝敗予想をツイッターで聞いてみたところ、願望もありつつとは思いますが8割近くの人が挑戦者ノリでした。確かに先手番の角換わり腰掛け銀の勝率が高すぎるし、ここまでの将棋の内容からそう思われても仕方なかったと思いますが、本局の渡辺明三冠は滅茶苦茶強かったですね。

雰囲気的には羽生さん相手に3連敗4連勝した時の雰囲気がちょっと出てきた気すらします。次は渡辺明三冠の先手番。ふつうに振り駒勝負までありそうな。

「勝った時の渡辺明三冠のブログ更新は遅い」定跡があるんですが(あるんかい)、昨日の更新が早かったのはホッとしたところがあったのか、日程が詰まってるから早めにこなしておこうと思ったのか、果たしてちょっと一杯飲んだのか…は気になる所ですw
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テーマ : 将棋 - ジャンル : ゲーム

Tag : 藤井聡太渡辺明

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